大山鷹之介『土耳其航海記事』

大山鷹之介 『土耳其航海記事』 東京, 大山鷹之介, 明治24(1891)年, 163p.

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大山鷹之介(1869-1938)は海軍軍学校(1890年卒業、第17期)出身の海軍軍人で、1918年には海軍少将までなった人物。
第17期生の第1期実務練習として、折から日本近海で沈没したトルコのエルトゥールル号の生存者69名を送還するためにトルコまで航海した。この時に使用された船がコルベットの「金剛」「比叡」で、大山は「比叡」に乗り込んだ。比叡の航海報告書は先に紹介したが、本書は大山が個人的に書きとめていた旅行記で、帰国後にすぐに出版したもの。
報告書では観測データや航海記録などが中心の構成だが、本書は大山の個人的な感想が中心となっている。初めての本格的な航海についての不安や、寄港地で垣間見えるイギリスの強勢ぶりと搾取されるアジアという現実を踏まえた今後の日本の進むべき道などについて、21才の若者らしい率直な筆致が印象的だ。