渋谷政雄『南洋便覧』

渋谷政雄編 『南洋便覧』 シンガポール, 南洋便覧編纂所, 明治44(1911)年.

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今回は、明治末期にシンガポールで刊行されたマレー半島(ボルネオも含む)のガイドブックを取り上げる。
このガイドブックはその名に相応しく、各都市の写真マレー語会話集地図など、バラエティに富んでいて、ビジュアル的にも充実しているが、いかんせんテキストの情報量―特に肝心な各都市の案内など―が非常に乏しい。
それもそのはず、本書はそもそも、橋本天涯という者が中心的な役割を担って製作を進めていたが、不幸にも橋本が道半ばにして亡くなってしまったために、非常にコンパクトなものとなってしまっている(その分、紙質を上げたようだ)。渋谷は、出資者に向けて続編での捲土重来の予告(=出資のお願い)をしているが、その後、続編が作成されたのかどうかは詳らかではない。