気賀秋畝『暹羅土産 仏骨奉迎』

気賀秋畝 『暹羅土産 仏骨奉迎』 京都, 仏骨奉迎写真発行所, 明治34(1901)年.

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名古屋に覚王山日泰寺という寺院がある。1904年に日本とタイの修好の象徴として建立された超宗派の寺院である。この寺には、1898年にインド北部で発見された釈迦の遺骨(御真骨)の一部が安置されている。
この御真骨、「覚王山日泰寺の歴史(在京タイ王国大使館「覚王山日泰寺の歴史」2008.11.14)」によれば、そもそもは発見後にインド政府よりタイ王国に寄贈されたものだが、その後日本からの「同じ仏教国として是非とも分骨してほしい」という官民あげての要望を受けて(当時駐タイ公使だった稲垣満次郎が大きな役割を果たしたようだ)、1900年にその一部が贈られたものである。
その日本への仏骨寄贈に際しては、18人からなる日本から超宗派の奉迎団が派遣され、1900年6月12日、ワット・ポーにおいて国王臨席の下に盛大なセレモニーを行った。その際の記録集が、カメラマンの気賀の手になる本書である。
ここには、日本・タイのの関係者(国王夫妻や高僧たち)の肖像やバンコク・アユタヤの寺院などの写真だけでなく、セレモニーの写真や、日本での歓迎ぶりを示す写真が収録されており、当時の様子を垣間見ることができて興味深い。