横浜で聴き、走り、話す

第11回図書館総合展に休暇を取って行ってきました。

サンメディア主催:セッション:図書館資料を100パーセント有効活用!「OPACを超える瞬間〜図書館の現場から」

仕事に直結するのでコメントは差し控えますが、非常に面白かったです。既知の方が登壇されていたので挨拶したかったのですが、時間が取れなかったのが残念。

Library of the Year 2009

「今後の公共図書館のあり方を示唆する先進的な活動を行なっている、公立図書館に限らず、公開された図書館的活動をしている機関、団体、活動の、 最近の1〜3 年間程度の活動を評価対象期間とする」ということで始まったこのイベントも今年で4回目。
大阪市立図書館渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター奈良県立図書情報館が優秀賞としてノミネートされた今回は、熱いプレゼンテーションと拮抗した審査の結果、大阪市立図書館が大賞を受賞しました。
事前のプレスリリースでは「医療や科学技術に関するデータベースをサイトラインセンスの取得により、市内の23地域館すべてで利用できるようにするなど、ハイブリッド図書館のモデルとなりえる点が評価されました。」とありましたが、ディスカッションを聴いていると、(新規ではなく)「既存の図書館が他の機関のモデルとなるようなサービスへと一歩踏み出した」という点が評価された印象です。確かに、古く、そして大きな組織ほどこれは難しい。
とは言え、奈良の図書館の枠を超えようとする「アバンギャルド」な挑戦、組織自体がMLA連携を体現している渋沢栄一記念財団実業史研究情報センターも興味深い。終了後に関係者の方と話していて出てきた、多くの図書館にとって近い目標としての大阪市立図書館、その一歩向こうの目標としての奈良県立図書情報館、遠い目標としての渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター、というコメントに納得しました。

ARGカフェ@横浜

予告どおり仙台に引き続いての参加。今回のライトニングトーク、登壇者が多くそれはそれで面白かったのですが、質疑応答などが殆ど無くて消化不良気味になってしまったのが残念でした。
今回もライトニングトークにスピーカーとして登壇しました。スライドはそのうちARG本家サイトに掲載されると思うので、ここでは珍しく作った発表原稿を載せておきます。

 このARGカフェという<場>はとても刺激的で、僕も楽しませてもらっているのですが、岡本さんもお話されているとおり、コミュニケーションを促進するために考え抜かれた<場>の設計というものがなされていると思います。このカフェのライトニングトークしかり、この後のフェストしかり。
 僕も昔からこういった<場>の設計には興味があったのですが、今日は、仲間とやっている小さな勉強会を通じて気づいたことを少しお話させて頂こうと思います。
 さて、今日お話する勉強会というのは、ずばり「勉強会@中央線」。大学で情報教育の講師をされているNさんと出版者経営のOさんと僕という3人の中央線沿線在住者が去年の2月にスタートさせた小さな集まりです。
 ちなみに、タイトルの「内と外」というのは、とある方がこの会を評してつけてくれたキーワードです。これは後ほど。

 この勉強会、もともとは都内某所で開かれていた某会合で顔を合わせた幹事3人が、家が近いということで帰りが一緒になることが多く、その時に「何かやりたいですね」と話したのがキッカケです。2007年の末ごろのことでした。その後、打ち合わせと称する飲み会を何度かやって、2008年2月にスタートさせました。
 夏休みの8月を除く月1回のペースで、19:30から22:00まで開催していまして―もちろん22:00以降も飲むヒトもいますが―、今月で20回目になります。
 コンセプトは「中央線に縁のある、そして『情報』に興味のあるヒトが美味い料理と酒を楽しみながら、持ち寄ったネタを肴に、聴いたり、話したりする『ゆるい場』」というものです。また、あまり気負いすぎないために、「特にアウトプットは意識しない」というポリシーも持っています。要は、楽しく飲めればいい、ということですね。会場は、1回目を除き、高円寺ノラやというギャラリーバーを借りています。
 基本は、スピーカーに話してもらい、その後、あるいはその途中からなし崩し的にディスカッション、というか駄弁るのですが、暑気払いや忘年会などの節目では、コアメンバーでライトニングトークをやったりもしています。

 この勉強会でどんなことが、どんな人間によって語られているのか。コアメンバーは10数名で、図書館員、研究者、展示ディレクター、出版者、高校・大学の講師、図書館業務委託ベンダーなど微妙に色々な肩書きを持つ人たちが集まっています。ちなみに、メンバーには、ARGカフェで知り合いになった研究者の方もいます。
 そして、Webアーカイビング、マンガ雑誌のデジタル化、ラーニングコモンズ、業務委託の現場の模様、図書館訪問などの図書館ネタから、出版ネタ、スパムメールや蛾の分類、19世紀イギリスの書物生産などの研究の話まで、様々なネタがコアメンバーやゲストによって提供されています。
ARGの岡本さんには先月、「コラボのためのプラットフォーム設計」というネタでお話いただきました。今月は、来週なんですけれども、最近創刊されたWebマガジン「航」について、仕掛け人の仲俣暁生さんにお話いただく予定です。

 この勉強会@中央線という「場」を設計するときに、狙ってやった結果としての「必然」と、図らずも好条件に恵まれたという「偶然」という二つのポイントがあったと考えています。
意図的にやったのは、「中央線に縁のあるヒト」「情報ネタに限る」という参加者と内容にゆるい制約を加えたことです。全くの異種格闘戦も面白いのですが、全くかみ合わないヒトが来るとディープな話にまで行きづらいのも確かです。それを回避するために、一見ふざけた、自画自賛で恐縮ですが、しかし絶妙な制約をかけました。「中央線に縁のある」といっても実際はハードルは低く、沿線在住、沿線の学校に通っていた、沿線の街がすき、などとどうにでもできる運用にしています。また、「情報」という言葉も何にでも結び付けられる言葉ですし。あと、時間を明示的に区切って、ダラダラすることのないようにもしました。

 一方で、ノラやさんの料理の質が非常に高かったこと、12人くらいのキャパで箱型の座席でプロジェクタから投影されるスクリーンを囲むという座席配置といったことは、想像以上に大きなポイントでした。また、幹事3人のキャラも、オーナーシップを取るOさん、バランスを見るNさん、実際に切り回す僕、という具合で、うまく分担できていたと思います。
こういう勉強会は、「幹事の義務が負担になって継続できなくなった」とか共有地、即ちコモンズの悲劇とでも言うのでしょうか、「色んな人が出入りして訳がわからなくなった」ということで悲劇的な結末を迎えることも少なくないのですが、この勉強会は「ゆるいがぐだぐだでない」という絶妙なバランスを保ったままここまで来ている、と自負しています。

 以上のことを踏まえると、「場」を考えるときに重要なポイントになってくるのが、相反する二つの要素のバランスだと思います。「内輪とアウェー」「制約とフリー」「刺激とぐだぐだ」・・・。僕たちの勉強会を「内と外」と評したヒトも―このヒトもコアメンバーですが―、そういったものを感じていたのかもしれません。
 とは言え、どんなに絶妙なバランスの下にある「場」というのも、何時までも良い状態に保たれたままにしておくというのは難しいものです。僕たちもそれは最初からわかっていたので、「どんなに長くても2年」ということを考えていました。何も考えずにやる一年目、それを踏まえて充実させる二年目。三年目ともなれば、どうしてもダレてしまうかもしれない。そんなわけで、この勉強会@中央線は今年をもって終了することにしました。
 今は賛否両論あるのですが、後から振り返れば一番良いタイミングだった思えるようになると思っていますが、こういった<場>をやめるタイミングというのも、これまた難しい問題です。
ともあれ、次はどんなことをやろうか、色々と企み中です。面白い話があれば是非声かけてください。